
6 乗らない日々の罪悪感
オートバイに乗らない日々が続くと、なんだか悪いことをしているような気がすることがないだろうか。
私は休日であってもオートバイに乗らないことが多い。他にすべきことがあって乗る時間がない時もあるが、単純に気分がのらないから乗らない、という日が圧倒的に多いのだ。
対して「休みの日には必ずツーリングに行きます」という人もいるが、人それぞれにオートバイとの付き合い方があるのだから大抵は何も思わない。
でも時間に追われて生活のバランスを自分で思うように管理できていない時には、そういった人に出会うと気分が沈んでしまうことがある。自分が全然乗っていないことに対して罪悪感にかられるのだ。
何がまずいのか分らないが、漠然と「まずいなぁ」と思う。自分で働いて手に入れたオートバイであるから誰かに申し訳なく思うわけではないのに「乗らなきゃな」という義務感と、もどかしさを感じてしまう。
この オートバイに乗っていない日々の得体のしれない罪悪感はどこから来るのだろう。私は考えた。世の中には、物事に対する情熱と、それに接する時間とが比例するという前提があることが原因ではないだろうか。
オートバイに関して言えば「好きならたくさん乗っていて当然である」というもので、その思い込みはオートバイが好きだからこそ私の中で矛盾を生じさせる。
なぜなら、私はオートバイが好きで、趣味だと思っている。でも絶対的に乗れない環境でないにも関わらず、自分が真に乗りたいと思っていない時があるからだ。そうするとしばらくオートバイに乗っていないのに「好きだ」などと堂々と言ってはいけないような気がしてくるし、オートバイが好きだということが嘘をついているような気がして罪悪感になるのかもしれない。
現代人は皆忙しすぎて時間に飢えている。やりたいことが溢れていて充実した忙しさなら良いが、嫌だけどやらなければと思いこんだことに追われて時間がない場合もある。後者の場合は自分を偽ることなく不必要な時間を排除していかないと、時間さえあればもっとオートバイに乗れるのに、自由じゃないなぁと感じてしまう。
でもただ時間があるということが自由を意味するのでは当然ないのだ。 生きる時間をデザインして、選択した道を自分で由として歩めることが自由なのだと思う。
ところで私はオートバイで日本一周しようと考え始めたころ、そうしたいと願うならば何カ月間か日常を離れて日本一周することに集中できる環境にあった。
世界一周が出来るほどにはお金も時間も心の準備もなかったが、日本一周ならなんとかなりそうだった。時間があって勝手気ままに放浪する「旅人」なるものが、自由でかっこよく思っていた時期である。
しかしいかに理想的な条件であっても、それが自分の真に望む世界ではない気がした。私には正直他にもやりたいことが溢れていて、欲しいものは何一つ諦めたくない。だから日本一周の夢だけをひいきにして他の夢をおろそかにすることは自分自身納得いかなかったのである。それに旅で学ぶことも多いが、日々の生活が私を大きく成長させてくれることも分かっていた。
だから私は日常を旅にしてしまうのではなく、日々の生活の合間をぬって断続的に日本一周することを選んだのだ。
理想の自分に近づくための様々な活動を同時進行させながら、つねに限られた時間の中でもオートバイと接することが、私にとっては自由を意味したのである。
要するに私は、オートバイに対する情熱と接する時間とは必ずしも比例しないと考えてきた。
誰にだって日常の大切な生活がある。仕事があり、家庭もある。おろそかにすべきでない大切な時間もあるし、一つの計画が終わって休養と内省のためだけに時間を使うことも必要である。
オートバイに乗りたければ時間を作って乗ればいい。自分を偽って無理をすることがないように、乗りたくなければ乗らなければいい。生活のバランスは自分で整えるべきだろう。だから自分で選んだ結果としてオートバイに乗らない日々が続いても、罪悪感にとらわれることは不要である。日常の低下した意識に時間を使うことはあまりにもったいない。
私はオートバイと接する時間が短くても、大好きなオートバイに誠実であることはできると思う。
時間に関することだけではない。経験が浅いこと・知識や技術の不足、メンテナンスが自分で出来ないといったことで後ろめたさを感じて、堂々とオートバイが好きだと言えない人が多いように感じる。何を基準にしてもオートバイに対する情熱などは他人と比べられるものではないはずだ。オートバイに乗ることを自分の意志で選択したなら、他人から何かを押し付けられることなく、その付き合い方も自由に決めたい。そのためには誰もが自分の気持ちいいペースで、自分のルールの中で、堂々とオートバイと接していくことが必要だと思う。
(2007年11月 筆)
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